INFORMATION

法務情報

2011/09/13

法務情報

【法務情報】「公益法人改革」ってなに?

新潟事務所弁護士今井慶貴その他

 大相撲が、賭博問題に引き、八百長問題で揺れています。春場所(※2011.3月場所)はついに開催中止となってしまいました。
 このままでは、相撲協会は「公益認定」を受けるのは難しいと言われているところです。

 
 この「公益認定」とは何のことでしょうか?

 
 もともと、民法で公益法人として、「社団法人」と「財団法人」が規定されていました。

 
 社団は人(社員)、財団は財産(基本財産)からなる団体です。

 
 明治29年の民法制定以来、抜本的な見直しがなされないまま、民間非営利部門を担う代表的な法主体として位置づけられてきました。主務官庁の許可のもとに設立され(許可主義)、税制上の優遇措置を受けてきました。

 
 近年、公益法人のあり方に批判が投げ掛けられていました。
 多数の子会社を設立して独占的事業で莫大な利益を上げる法人や、天下り役人に高額な報酬や退職金を支払う法人などの存在が、社会的な批判を受けました。

 
 そうした中、平成12年秋から「KSD事件」(財団法人であったKSDに絡んだ政治家への汚職事件)が社会問題となり、公益法人改革の流れが強まったのです。

 
 そして、平成18年に公益法人関連三法、すなわち「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(長くてすいません。)が成立し、平成20年12月1日から関係政省令とともに施行されています。

 
 大きく変わった点を説明します。

 
 「法人格の取得」と「公益性」の判断を分けました。

 前者については、余剰金の分配を目的としない(非営利)の社団・財団について、公益性の有無にかかわらず登記によって法人格を取得できるようにしました(準則主義)。

 
 こうして設立されるのが、「一般社団/財団法人」です。

 
 後者については、内閣総理大臣又は都道府県知事が、民間有識者による公益認定等委員会による意見に基づき、一般社団/財団法人の公益性を認定することになりました。

 
 認定されると「公益社団/財団法人」となります。

 
 これが「公益認定」です。

 
 公益認定されるメリットとしては、税制上の優遇措置があるほか、社会的な信用を得られるという点が上げられます。既存の社団/財団法人は、平成25年11月末までに「公益」か「一般」への移行をしなければ、解散となります。

 
 公益認定されるための要件として、公益法人認定法5条は、公益目的事業支出が全支出の50%以上であることなど17項目を上げ、同法6条に欠格事由があります。「公益目的事業」の定義は、同法別表の23事業に該当し、かつ、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものである必要があります(同法2条)。

 
 大相撲に八百長が蔓延していれば、この公益認定を受けるのは厳しくなります。

 
 親方の個人財産である相撲部屋による力士養成や、高額な金銭で取引される年寄株の問題など、それでなくとも制度の見直しが不可欠なところでした。

 
 ちなみにプロ棋士の団体である社団法人日本将棋連盟は、外部理事の招聘、女流棋士の一部の正会員化、棋士への給料・ボーナスの廃止、厚生年金からの脱退等を総会で決めて公益認定を申請しています。これは、公益認定基準の一つに「事業の実施に当たり、社員、評議員などの法人の関係者に対して特別の利益を与えないこと」を考慮してのことだそうです。

 
 仮に、相撲協会が公益認定を受けられず、一般財団法人になる場合、公益目的財産相当額を、計画的に公益目的に支出しなければならず、税制優遇も失います。解散になった場合には、協会の寄附行為には「文科大臣の許可を受けて、類似の目的を有する公益法人に寄付する」と定められており、両国国技館の土地建物を含む約440億円の財産を手放さなければなりません。

 
 一相撲ファンとしては、土俵際から踏ん張って、なんとか危機を乗り越えてほしいものです。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 今井 慶貴◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2011年2月28日号(vol.73)>

月間アーカイブ